Cellのcommentaryから.
Problem choice and decision trees in science and engineering
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(24)00304-0
自分の研究の行き詰まりを解決してくれるかもしれない,と思って読んでみた.この手のだとシステム生物学のUri AlonがMolecular Cellに書いた
How to choose a good scientific problem
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1097276509006418?via%3Dihub
は大学院生の頃からずっと読んでいるが,この論文も引用されている.
問題の選択に時間をかけること
これはしばしば言われることだ.柳沢正史先生も良い問いを見出すことの重要性を述べている.
柳沢正史教授が2017年度朝日賞を受賞 | NEWS - 筑波大学
科学の仮説とは,しょせん人間が小さな頭脳で考えたストーリーにすぎません。目の前のデータがすべてで,自分の仮説をその上に置くことは許されないことなのです。さらに,「良い問いを見出すことは,問いを解くことより難しい」ということも肝に銘じています。科学の価値は,「新しいことを知ることそのもの」にあります。科学とは,「役に立ってなんぼ」のものではありません。
Intuition pumpsを練習し,commom trapsを避ける
生物学はシステムをperturbし,計測し,データを解析する.
新しいアイデアは,technologyかlogicのどちらかに分類される.
そのときに,intuition pumpsは役に立つ.Table1にそれらの例が載っている.Brain stormingによさそうである.
避けるべきtrapとして,familiality, 狭い目的にみんなで集中する,分野に遅れて入る,自分の努力などによるbias,尊敬する人を表面だけなぞっておなじ問題に取り組んでしまう(それらの人はbrand-newなproblemを扱って尊敬する人物になっている)など.
Riskと仲良くする
名前をつけ,定量化し,着実に進める.そのための方策をBox1においてくれている.
riskを正確に見積もると,逆に信頼性が増すらしい.たしかにそうだろう.
早めにgo/no-goを決める実験をやっといたほうがよい,というのも書いてあった.
しかし,以下の文章は衝撃的…scRNAseqはもう古いのか…
The example we use in class (Box 1) outlines an effort to use single-cell RNA sequencing to identify new enteroendocrine cell types in the intestinal epithelium, an idea that is outdated but still illustrative.
最適化
どうも,プロジェクトを選んでから,成功確率とインパクトを高めるようにしていくことを勧めているようだ.よくわからないところもあった.
生物学だと,どれくらい調べた/知ったか,と,どれくらい一般化できるのか,が評価軸としてある.テクノロジーだと,どれくらい広く使われるか,応用にとってどれくらい重要なのか,という軸がある.
Fix one parameter, let the others float
この章は示唆が多かった.パラメータをガチガチにしすぎると広がりがない.一方でパラメータを決めなさすぎると(漠然と,自分は細胞工学においてすぐれた研究がしたい!みたいな)stuckしてしまって進まない.
どのパラメータを固定すべきかは,自身の興味と,ラボの専門性による.
プロジェクトがうまくいかないとき
プロジェクトは一直線には進まない.2年くらいしたら別の解決策があったりする.In silico (AlphaFoold)やDNA全合成などあらたなテクノロジーを試してみては?
実験をやって,それを批判的に吟味するというback and forthが重要である.
プロジェクトの危機のときは,プロジェクトの問題を修正しアップグレードするよい機会だし,追い込まれていることを自覚し理性的に解決する良い成長の機会である.
プロジェクトがうまくいかないとき,fixしたパラメータを振り返ってみて固定を解除してみるのは重要.別のやり方としては,得た結果から別の質問をつくってしまい,プロジェクトを別の形で再定義するやり方だ.
多くのヒントがあった.また読み返すことになるだろう.